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2021.01.28

環境問題をプラスチックから考えてみる:「バイオプラスチック」とは

 なんとなく,バイオなら自然に負荷をかけないとか,勝手に分解してくれると思いがちである。
 その原因はおそらくバイオプラスチックが二つの異なる素材を包括している呼称だからではないだろうか。二つとは以下である。

   ・バイオマスプラスチック
   ・生分解性プラスチック

 これらは性格が異なり,バイオマスプラスチックの由来は原料から,生分解性プラスチックの由来は性能から,命名されている。

バイオマスプラスチック

20201206レジ袋のバイオマスプラマーク.jpg 非生分解性で,従来のプラスチックと性質はほぼ同じ。したがって,ポイ捨てすれば,やがて海に流れ出たり,マイクロプラスチックになってしまう。バイオマスプラスチックの生態系への影響は,これまでのプラスチックと変わらない。したがって,従来品同様に適切な処分が必要である。
 現在,市場に出回っているプラスチックのほとんどは化石資源(光合成産物が化石化したもの,化石燃料,原油)をもとに作られている。バイオマスプラスチックはその原料を化石資源の代わりに,現在の生物資源としてある光合成産物(例えば,トウモロコシ,サトウキビ,ミドリムシなど)で作られる。
 バイオマスプラスチックの利点は化石資源の原油を原料としていないため,燃やしても温室効果のある二酸化炭素(CO2)を出さないことである(ただし,作る時に使用するエネルギーが自然エネルギーかどうかは別)。
 このマークを見て,生分解性と勘違いする人がいるかもしれない。バイオマスプラスチックは従来製品と性能的に変わらないので,むしろマークをつけない方が誤解されないのではないだろうか。

生分解性プラスチック

 国際的に統一されてはいないが,一般的には「使用中は通常のプラスチックと同じように機能し,使用後は自然界の微生物の働きによって低分子化合物に分解され,最終的には水と二酸化炭素などの無機物に分解される高分子素材」をいう(*1)。ざっくりいうと,生分解とは,自然界に存在する微生物が分解してくれるということ(ただし,後述するがそれには厳しい条件がつく)。
 一般に生分解性プラスチックには以下の二つが含まれている。

   ・生分解する,化石資源由来のプラスチック
   ・生分解する,バイオマスプラスチック

 近年,原料には生物資源由来の製品開発が進められているが,現状では「石油由来の原料」で作られたものが多い。そのため燃やせば当然CO2を出す。
 生分解性能を持つといっても,完全に分解されるかどうかは条件検討が必要である。特にこれまで開発されてきた素材は,土壌の細菌によって生分解される製品がほとんどである。現状で海洋での分解が知られているのはPHBHなど限られている。問題はプラスチック製品が意図せずあるいは投棄される海洋が河口・沿岸から沖合,表層から深海までの広い水温と塩分の幅をもち,場所によって異なる細菌相を育むため,どの程度の生分解性能が発揮されるかが未知であるということだ(*2, 3)。分解速度は条件により異なるから,生分解まで6ヶ月も漂っていては従来品と変わらず生態系に影響を及ぼすと考えた方が良い。日本バイオプラスチック協会が指摘しているように,海洋プラスチックごみ対策の手段の一つにはなりうるが切り札ではない(*2)。
 とはいえ,生分解性プラスチックは生ゴミと一緒にコンポストで処理することが可能であることと,埋め立て処分した場合,いずれ分解するので処分場の延命化が図れるなどの多くの有効な能力があることから,それを生かすような利用法が必要である。さらに将来的な用途として,リサイクルが困難な医療・衛生商品,食品包装素材,肥料の被覆材などが考えられる。
 現在,従来製のプラスチックの問題の一つとして,世界中で海洋に流出している肥料の被覆材がある(*4)。肥料の効果を長持ちさせ施肥作業量の軽減につながるとして,肥料を穴のあるプラスチックで包んだカプセルが多量のマイクロプラスチックとして,農地から海に流出していることが知られている(*5)。カプセルを流出しても分解される生分解性プラスチックで代替できれば,問題解決の一助になる。

おわりに

gomi_bunbetsu.png 従来のプラスチックあるいはバイオマスプラスチックに生分解性プラスチックを混合した場合には注意が必要である。細分化断片化が加速することでマイクロプラスチックの生成を加速する。生分解性プラスチックとバイオマスプラスチックは共に有望な新素材だが,使い方や処理方法がきちんと示されてこそ真価を発揮する。明確に使い方を絞り込むことが大切だ。
 また,バイオプラスチックは家庭から回収する際にも,混在していいのかどうかなど,市民にはわからないことも多いはず。現在,業界団体では統一したマークを設定しているが,市民が見てすぐに分かるほど認知性が高いとは言えない。例えば,素材を問わず一律に行うとか,袋自体を色分けするなどの工夫が必要で,統一したルールや情報の周知がより良い削減につながる。

(文責: 野村 英明)


注*)

  1. 塩見紘一・小関英一(1997): 発酵乳酸から作った生分解性プラスチック. 醸協, 92, 29-35.
  2. 重化学工業通信社(2019):第6章バイオプラスチックへの期待と誤解. 「海洋プラごみ問題解決への道〜日本型モデルの提案〜」, 177-193.
  3. 海洋プラスチック研究最前線: 6. 生分解性プラスチック 海洋汚染防止の解決策か~生分解性プラスチックへの期待 https://fsi-mp.aori.u-tokyo.ac.jp/2020/11/-6.html
  4. 坪内正之・山本一夫・山田憲照・丸本卓哉(1995): 肥料被覆材の土壌中における分解性. 日本土壌肥料学雑誌, 66, 247-252.
  5. 浅井雄大・張徳偉・千葉賢(2018): 四日市市楠町吉崎海岸のマイクロプラスチック分布の現地調査. 四日市大学論集, 31, 125-135.
  6. Katsumi N, T Kusube, S Nagao & H Okochi (2020): The role of coated fertilizer used in paddy fields as a source of microplastics in the marine environment. Marine Pollution Bulletin, 161, 111727.