From Project Leaderごあいさつ

東京大学大気海洋研究所
東京大学大気海洋研究所
教授 道田 豊 / MICHIDA Yutaka
「科学に基づくリスク評価情報の提供を目指して」

ここ数年、海洋プラスチックごみ問題が国際的にも重要な課題と認識されてきています。とくに2015年のドイツ・エルマウサミット以降は国際政治の場で各国首脳が直接言及するようになり、2019年のG20サミットでは「大阪ブルーオーシャンビジョン」を共有し、2030年までに海洋プラスチックの追加的汚染をゼロにすることとしました。この課題自体は急に生じてきたものではなく、すでに1970年代には、海洋におけるプラスチック汚染に警鐘を鳴らす研究が報告されていました。
過去10年ほどの間、国内外の多くの研究者が海洋プラスチックに関する研究に取り組み、次々と成果が挙げられています。しかし、依然として未解明の部分が極めて多く、効果的な対策を講じるためには、リスク評価も含めた幅広い研究を進める必要があります。東京大学でも、2019年度から日本財団との協力により、いくつかの大学や研究機関等の参加も得て3年計画で関係の研究を開始しました。本研究プロジェクトでは、特に実態がよくわかっていない1㎜以下の小さなプラスチックに焦点を当て、その分布や輸送の実態解明、生体および生態系への影響評価を目指します。これら自然科学的課題に加え、プラスチックごみの全体量を削減するための方策についても検討を進めることとしています。
きわめて複雑で、実態のよく分かっていないこの課題に対して、こうした学際的な研究を強力に進めることにより、できる限り確かな科学に基づくリスク評価に関する情報を社会に提供することを目指します。重い課題であることは十分承知していますが、多くの方々と意見や情報の交換を行い、協力することでこの課題に取り組んでいきたいと思います。