About this project本プロジェクトについて

私たちは日常生活や産業活動で多量のプラスチックを使用します。残念ながら部分的には自然界に漏れ出て、海にも流れ込みます。
海洋に流出するプラスチックの量は世界のGDPと相応じて増え続け、環境汚染が顕在化しています。プラスチックはプランクトンや小魚、さらには海鳥などによって摂餌され、プラスチックそのものに含まれたり環境中から吸着したりした有害な化学物質を生体内に運ぶほか、太陽光を浴びるうちに劣化してメタンガスのような二酸化炭素よりも強い温室効果を持つガスを放出することが知られるようになりました。世界中の多くの研究者から次々と報告されるプラスチックの問題は、もはや経済活動に影響を及ぼすまでになってきています。
しかし、地球規模での対策が急がれる中、具体的な政策に結びつく、根拠といえる実態を私たちはあまりよくわかっていないという現状があります。例えば、海を漂う多量のプラスチックごみはいったいどこに行ってしまうのでしょう?
そこで東京大学は、日本財団から未来社会協創基金(FSI基金)に助成を受け、2019年に大気海洋研究所に「海洋プラスチック研究事務局」を設置し、「FSI海洋ごみ対策プロジェクト」を開始しました。日に日に切迫する海洋のプラスチックごみの包括的な対策にむけた研究、情報発信を、国内外の研究機関と連携して行っています。
2019年から3年間の研究成果を踏まえ、2022年度からさらに3年間、研究を推進することになりました。
Our missionミッション
ActⅠ海洋プラスチックごみの科学的知見の充実
海洋プラスチックごみ問題に対応するための基盤となる科学的知⾒を充実させ、信頼できる科学的根拠に基づいた⽅策で問題解決に向かうことが必要です。このため、東京⼤学を中核とし、関係する⼤学と連携して、以下のテーマに取り組んでいます。
ActⅡ研究プラットフォームの構築および情報発信
国内外の異なる分野の学問領域を含む研究者等との連携を強化するため、「研究プラットフォーム」の構築を⾏い、あわせて研究成果等の情報発信を強化しています。
From Project Leaderごあいさつ

教授 道田 豊 / MICHIDA Yutaka
ここ数年、海洋プラスチックごみ問題が国際的にも重要な課題と認識されてきています。とくに2015年のドイツ・エルマウサミット以降は国際政治の場で各国首脳が直接言及するようになり、2019年のG20サミットでは「大阪ブルーオーシャンビジョン」を共有し、2030年までに海洋プラスチックの追加的汚染をゼロにすることとしました。この課題自体は急に生じてきたものではなく、すでに1970年代には、海洋におけるプラスチック汚染に警鐘を鳴らす研究が報告されていました。
過去10年ほどの間、国内外の多くの研究者が海洋プラスチックに関する研究に取り組み、次々と成果が挙げられています。しかし、依然として未解明の部分が極めて多く、効果的な対策を講じるためには、リスク評価も含めた幅広い研究を進める必要があります。東京大学でも、2019年度から日本財団との協力により、いくつかの大学や研究機関等の参加も得て3年計画で関係の研究を開始し、2022年度からさらに3年間第2フェーズの研究を進めています。本研究プロジェクトでは、特に実態がよくわかっていない1mm以下の小さなプラスチックに焦点を当て、その分布や輸送の実態解明、生体および生態系への影響評価を目指します。これら自然科学的課題に加え、プラスチックごみの全体量を削減するための方策やそれを担う自治体との連携などを視野に入れた社会科学的課題についても検討を進めることとしています。
きわめて複雑で、実態のよく分かっていないこの課題に対して、こうした学際的な研究を強力に進めることにより、できる限り確かな科学に基づくリスク評価に関する情報を社会に提供することを目指します。重い課題であることは十分承知していますが、多くの方々と意見や情報の交換を行い、協力することでこの課題に取り組んでいきたいと思います。