Research研究内容

ACT 1. 海洋プラスチックごみの科学的知見の充実

海洋プラスチックごみ問題対応の基盤となる科学的知見を充実させ,信頼できる科学的根拠に基づき正しく問題を伝えていきます。このため,東京大学を中核とし,関係大学との連携のもとで,以下の3つのテーマに取り組んでいます。

テーマ1. 海洋マイクロプラスチックの実態および挙動の把握

レジ袋,食品包装,車の部品や医療器具,様々な分野でプラスチックは用いられています。その特徴の一つは水より軽いことです。その性質は細かくなったマイクロプラスチック(5 mm以下のプラスチック片)になっても変わらないので,たくさん海面に浮かんでいてもおかしくありませんが,実際にはそうではありません。自然界の中をプラスチックはどう動いているのでしょうか?
海洋中のマイクロプラスチックの分布や挙動は,効果的な対策を行う上で必要不可欠な情報です。これまでの成果を踏まえ,海水中および海底泥中のマイクロプラスチックの組成分布や動態について仮説検証型の研究を進めています。さらに,過去数十年にわたり保管されていた試料を再解析して,海洋プラスチック汚染の歴史を明らかにします。

1-1. 海面から海底泥まで海洋空間でのマイクロプラスチックの動きを追跡・調査する

水中のマイクロプラスチック(MP)が少ないとされているのは,プラスチック片の表面に藻類や細菌が付着して重くなって沈んだり,動物プランクトンや小魚などの生き物が食べて,糞の粒子として沈んでいくことが可能性として考えられます。

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1-2. マイクロプラスチックの動きを現場データと数値実験モデルによって明らかにする

海の様子は刻々と変化します。風や波による撹乱,雨による塩分変化などがあり,マイクロプラスチック(MP)は水中で混ぜ返されたり劣化したりします。MPの大きさや形,表面のツルツル度合いなどが異なれば,同じ力が働いても浮き沈みの様子が変化します。そのことで生物への取り込みや環境中での有様が変わります。そこで,大きさや密度の異なるMPがどのように水中で動くのかを数値実験で明らかにしていきます。

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1-3. 日本周辺海域70年間の海洋プラスチックごみ時系列変化:海洋プラスチックごみの歴史的変遷を明らかにする

国立研究開発法人水産研究教育機構塩釜拠点に保管されていた1949年~2016年の北太平洋移行域(東北地方東方沖)で実施された表層の稚魚分布調査の試料の提供を受け,混入しているプラスチックごみの長期変動を調査しました。

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テーマ 2. 海洋マイクロプラスチックの生体影響評価

小さくなったプラスチックは海洋生物のみならず,海洋生態系を介して人体にも入り込み,その影響が危惧されていますが,基本的な科学的知見は決定的に不足しています。海洋生物,海洋生態系のみならず,それを通して人体への影響可能性も指摘されており,これまでに,ごく微小なプラスチック粒子は血管やリンパに取り込まれることや,プラスチック関連化学物質の生体内での反応等が明らかになってきました。こうしたことを踏まえ,長期的な影響を含め,微小なプラスチック粒子の生態系および人体に対する物理的影響及び化学的影響の評価に関する研究を推し進めています。

2-1. 陸域から海域へのマイクロプラスチックの流出過程とMPに起因する化学的物理的生体影響

300µmより小さいサイズのマイクロプラスチック(MP)について,都市発生源から追跡した結果,プラスチックは陸域で微細化して海域に達していました。その経路の一つは,家庭での洗濯に由来する化学繊維(繊維状MP)が下水を介して海に流れ出ます。晴天時であれば下水処理で98%は取り除かれますが,それでもその処理水中の濃度は粒子毒性の閾値を超えていました。

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2-2. 食物連鎖の中でのプラスチック関連物質の挙動,遺伝子応答

日本沿岸に広く分布するムラサキイガイを使ってマイクロプラスチック(MP)の取り込みを調べる実験系を確立しました。この実験系を用いて,MPを模してPS製のビーズ粒子を与えたところ,粒子のサイズによって体内残留時間などが異なることが判明しました。

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2-3. プラスチックの細胞組織への導入機構と人体影響評価

マイクロプラスチック(MP)のヒトへの主な侵入経路として経口摂取による腸管吸収が考えられ,腸管からの吸収や蓄積,さらにその先の人体影響を知る必要があります。高度なヒト小腸モデル細胞実験では,取り込み経路とメカニズムの検討のために,50, 100, 500 nmのPS粒子に暴露したところ,50, 100 nmのMPは主に血液中に,500 nmのものはバクテリアの認識機構を通じて主にリンパ管に取り込まれました。

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テーマ 3. プラスチックごみ削減方策に関する社会科学的研究

海洋プラスチックごみは陸上の人間社会に由来しています。したがって,その削減には産業構造ばかりでなく,個々人の生活様式にもダイナミックな変化が求められます。海洋プラスチック汚染は海に流れ込むプラスチックを減らすことが対策になりますが,そもそも,私たちがプラスチックを使用する量を減らすということが基本です。

そこで,自然科学の成果を踏まえつつ,人文社会科学の視点を融合して,海洋プラスチックの削減に向け,ごみ削減策,管理方策,そして社会全体としてプラスチックごみを減らすための効果的な政策オプションの提示および市民の行動変容勧奨に向けた社会科学的研究を進めています。今後は自治体と連携して,市民参加型の活動の効果測定や制度面での検討など社会実装のためのパイロット事業をさらに発展させていきます。

3-1. 市民参加によるマイクロプラスチック調査

市民が参加できる海洋マイクロプラスチック調査の方法や仕組み,そして装置をデザインしてきました。これまでに海洋マイクロプラスチック(MP)の調査手法の提案,採取装置のプロトタイピング・ユーザーテストに加え,実際に神奈川県逗子海岸で地元住民の皆さんの協力のもと,考案した手法をより使いやすいものに改良しています

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3-2. プラスチックごみ削減に向けた消費者意識・行動変容の社会実践的研究

消費者のプラスチック製品に対する意識を可視化するツール「京都大学プラ・イド(Plastic Identificationの略)チャート」を考案しました。

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3-3. プラスチックごみ削減に向けたルールづくり

プラスチックそのものを削減するための方策を提示するために,国連や日米欧の先進7か国(G7),先進国に新興国を加えた主要20か国(G20)における国際ルールの検討や,経済協力開発機構(OECD)及び世界貿易機関(WTO)において循環型経済と貿易の観点からの検討といった国際動向,さらには中央省庁,地方自治体,企業といった国内のステークホルダー分析を行ってきました。

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テーマ 4. 第1フェーズまでの成果

海洋環境保全を実践する人々の行動原理を解明し,プラスチックゴミを清掃する市民や排出削減に取り組む市民がそれを行う動機を理解することで,そうした原理を織り込んだプラスチック削減の良い方策を生み出すことができそうです。

4-1. 環境保全に取り組む市民の行動原理と環境意識

海洋環境保全を実践する人々の行動原理を解明し,プラスチックゴミを清掃する市民や排出削減に取り組む市民がそれを行う動機を理解することで,そうした原理を織り込んだプラスチック削減の良い方策を生み出すことができそうです。そこで個人が有する自然観とプラスチック問題への対応の相関を知るために,食料品の買い物と海のプラスチックごみ問題に関する質問票調査を2020年10月に国内で実施しました。

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4-2. 農業廃棄物を有効活用したプラスチック代替品製造と利用促進

エジプトにおける石油由来プラスチックの生産・消費削減に向け,国際連合工業開発機関(UNIDO)との共同プロジェクトを進め,プラスチック代替素材としてサトウキビバガス(サトウキビ搾汁後の残渣)からの紙製造について検討しました。

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ACT 2. 研究プラットフォームの構築および情報発信

国内外の異なる分野の学問領域の研究者等との横断的な連携を強化するため,「研究プラットフォーム」の構築を行い,あわせて研究成果等の情報発信を強化しています。その一環として,国連工業開発機関(UNIDO)や,欧州の研究プロジェクト等との連携を進めます。