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2020.06.22

出版物の紹介:『海を脅かすプラスチック 漂うレジ袋は氷山の一角』(ナショナルジオグラフィック日本版2018年6月号)

 ナショナルジオグラフィック誌が海洋プラスチック汚染の特集を組んだ。まず目を引くのはプラスチックごみの写真だ。いずれも衝撃的で記憶に残る。プラスチックシートが溢れるバングラデシュのブリガンガ川、インドネシア・スンバワ島沖をプラスチックの柄が付いた綿棒につかまって漂うタツノオトシゴ、スペイン沖の地中海で漁網に絡んだアカウミガメ、沖縄の海岸で貝殻の代わりにペットボトルのキャップで身を守るヤドカリ......。
NG_June2018.png 丈夫で軽く、安価な素材であるプラスチックは、広く社会に浸透しており、心臓病の医療機器やジェット機にも欠かせない存在だ。一方でプラスチック製品は、4割以上が一度使われただけで捨てられ、推定で年間800万トンが海に流れ出ている。大きなプラスチックは海岸に打ち上げられたり、海面に漂ったりしているが、大半が砕かれて大きさ5ミリ以下のマイクロプラスチックになる。それが劣化し、さらに微細なナノプラスチックとなり、魚の生態組織、ひいては人体に入り込む可能性があるという。
 軽量で耐久性に優れているという、人間にとって有用なプラスチックの特性は、動物が危険な目に遭うリスクを高める。プラスチックを誤飲したり、プラスチック製の漁網が体に絡まったりしたことが報告されている海洋生物は、およそ700種にのぼる。ただ野生生物に与える長期的な影響は、まだよくわかっていないのだという。
 これまでに体内からマイクロプラスチックが見つかった水生生物は114種で、その半数以上が食卓にのぼる。特定の魚の個体数に影響を及ぼしているという科学的な証拠はないが、水生生物の実験ではマイクロプラスチックが消化管を塞ぎ、食欲を減退させ、発育不良や繁殖力の低下を招く。そのほかにも肝機能が低下したり、生殖機能が低下したりするなどの実験結果もある。
 しかし、人間への影響はどうか。マイクロプラスチックが人間にどう影響を及ぼしているかを調べる研究は難しい。人が食べて実験するわけにはいかない。食物連鎖の段階を経てプラスチックの特性が変化する可能性もある。加工や調理がプラスチックの毒性にどんな影響を及ぼすのか、そしてどの程度の汚染が有害なものか、何もわかっていないという。
 海を汚染するプラスチックごみを削減するには、リサイクル率を上げ、使用量を減らす必要がある。そして、わたしたちが無理なく、すぐにでもできることを6つあげる。
 ▽レジ袋をもらわない
 ▽ストローを使わない
 ▽ペットボトル飲料を買わない
 ▽プラスチック容器包装を避ける
 ▽できる限りリサイクル
 ▽ポイ捨てしない
 できることからさっそく実践していきたい。


(文責 三島勇)