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2020.06.16

出版物の紹介:『海洋プラスチック汚染』(中嶋亮太著)

『海洋プラスチック汚染』 (中嶋亮太著、岩波書店刊 1400円+税)

marine_plastic_pollution.png サンゴ礁や深海生態系の研究が専門である海洋研究開発機構の研究者が海の汚染に危機感を持ち、海洋プラスチックに関係する科学論文などをもとに、科学者が取り組んできた調査・研究からわかってきた汚染の深刻さを明らかにする。それとともに汚染の深刻さを和らげる方法を具体的に提示する。本書は、130ページほどの分量だが、専門的な研究成果を手際よくまとめ解説しており、一般の人にもわかりやすい内容となっている。
 海のプラスチック汚染は「使い捨て文化」の象徴といえる。現代社会では、欠かせないと思われているプラスチック製品は、使用された後、ポイ捨てや廃棄物の不十分な管理などによって、ごみとなって河川を通って海に流れ着く。海がプラスチックの「最終処分場」となっているのだ。プラスチックは、海を漂ったり、海岸に打ち上げられ、再び海に戻ったりするなかで、太陽光の紫外線に当たり、波に揺さぶられて断片化され、大きさ5ミリ以下のマイクロプラスチックになる。それがさらに海流に乗って広がり、深海底まで沈んでいく。
 本書は指摘する。海鳥やクジラ、ウミガメなど、大きめのプラスチックを誤食(誤飲)している海洋生物や漁網などのプラスチックに絡まる海洋生物は約700種類にのぼる。貝類やサンゴなどの底生生物、プランクトン、さらにカタクチイワシやマグロなどの魚類までもがマイクロプラスチックを摂取しているという。
 また、プラスチックにはさまざまな添加剤(化学物質)が含まれているうえ、海で漂流するうちに残留性有機汚染物質(POPs)を吸着すると記す。それらを食した生物が汚染され、その生物を食べた人間の健康にも被害を与える可能性があるという。
 著者は、これまで海に捨てられたプラスチックごみを回収するのは、コストや海洋の規模を考えると不可能だと指摘する一方、(1)プラスチック廃棄物の適切な管理・漏出防止、(2)プラスチック消費量の削減、(3)プラスチック製品やサービスの根本的見直し(リデザイン)と個人の「使い捨て文化」から脱却、(4)生分解性バイオマスプラスチックとセルロースなどの他のバイオマス系素材の早い普及をあげ、汚染を悪化させない必要があると訴える。
 海洋プラスチック汚染の現状と問題点を科学的に知りたい、汚染防止にどう対応したらいいのか、と考える人には格好の書である。

(文責 三島勇)