Columns & Reportsコラム・レポート

2020.09.30

国際海岸クリーンアップデイでマイクロプラスチック調査(2020/9/19)

 2020年9月19日(土)、この日は国際海岸クリーンアップの日。横浜市野島公園の海岸でマイクロプラスチック調査に参加しました。

 野島公園の海岸清掃は,横浜市のボランティア市民団体「海をつくる会」(以後、海会)の月例会ですが,今回は国際海岸クリーンアップの日本での推進,取りまとめをしている一般社団法人JEANに連携した活動になっていました(*1)。マイクロプラスチックの調査もその一環です。

 海岸に着いてみると,大きく目立つ漂着ゴミは見当たりません。後でわかったのですが,最近では近隣住民の中に自主的に清掃している人がいるのだそうです。綺麗だとゴミの投棄が減るということが知られていますが,漂着するゴミも流れ着くそばから回収していけば綺麗さを保ちやすくなるのでしょう。ただ,海岸清掃は,ゴミの排出からの流れを考えれば出口戦略です。清掃活動を発生抑制にいかにつなげていくのかが今後ますます重要です。

 さて,午後1時から清掃が始まりました。参加者は約50名です。およそ1時間半の間で,ゴミを回収し,分別してそれぞれの重さを量りました。当初少ないと思われたゴミも,集めてみると合計で64 kgになっていました。

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 マイクロプラスチックの調査は,海会の事務局長,坂本昭夫さんと東大の海洋プラスチック研究事務局の3名で行いました。まず,決まった面積の枠を砂に当て,深さ2センチの表層をすくい取ります。その砂を5ミリのふるいでふるったのち,さらに2ミリのふるいにかけ,ふるいに残った中身からマイクロプラスチックをピンセットで拾い上げていくという作業をしました。

 歩きながら砂の表面を見ているとプラスチック片が思ったより多量にあることはわかります。そして実際にふるいにかけてみると,驚くほどたくさんのレジンペレット(*2)が見つかります。それらは単一の成分でできている純粋なプラスチック成形材料ですが,長い年月を自然界でさらされていたためか,着色したり割れたりしているものが多くありました。また,人工芝の破片が多いことにも驚かされます。拾い上げられたマイクロプラスチックは合計225個。このうちレジンペレットが27%,人工芝の破片が20%を占めています。

 マイクロプラスチックは数字上では少ないようにも思えるかもしれません。しかし,野島公園でのゴミ清掃の範囲を約1000平方メートル(おおよそ,幅20 m,奥行き50 m)とすると,ざっくり10億個のマイクロプラスチックがある計算になります。しかも,今回の調査では合成繊維など,細かったりより小さかったりしてふるいの網目を抜けていくものは,自然物と見極められないため,一体どのくらいのマイクロプラスチックがあるかは想像もつきません。

 砂の中のマイクロプラスチックを分離・回収できる技術ができて,それが収益を生み出すのであれば,この終わりの見えない事業は環境改善事業として有望なのではないでしょうか。思わず,そんなことを考えてしまいました。

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 次回の野島公園の海岸清掃は10月31日(土)です。

(文責: 野村英明)


<*著者注>
*1) 国際海岸クリーンアップ(ICC: International Coastal Cleanup)
 アメリカのNGO Ocean Conservancyの主宰で1986年から始まり,ゴミのない海を目指し市民によるゴミ清掃活動とモニタリングを行なっています。世界中で同じ時期に実施され,世界共通の手法で集めたデータを集計しています。JEAN (Japan Environmental Action Network)はICCに1990年から参加し,1991年から日本の主要な窓口の一つとして取りまとめを行なっています。
*2) レジンペレット(resin pellet)
 レジンとは元来,天然樹脂のことですが,今日ではレジンペレットといった場合,大概は合成樹脂のペレットを指します。ペレットとは本来,小さい球のことですが,レジンペレットは必ずしも球形ではありません。しかし,こうした錠剤のような小さい粒状の合成樹脂を総称してレジンペレットと呼んでいます。