出版物の紹介:『図解でわかる14歳からのプラスチックと環境問題』(インフォビジュアル研究所著)
『図解でわかる14歳からのプラスチックと環境問題』
(インフォビジュアル研究所著 太田出版 1500円+税)
2019年12月に出版された本。14歳というから日本の学年では中学校2,3年生以上を対象にしています。実際に読んでみると,プラスチックに関する社会的な課題を包括的に知ることができるようになっており,私感としてはむしろ高校生や,社会人一般に読んでもらいたい本。
全体は5つのパートからなっています。パート1では「いま世界が直面するプラスチック危機」として,世界的に問題となっている海のプラスチックゴミの現状を知ってもらうための基礎を概説しています。パート2の「プラスチックの基礎知識」では,そもそもプラスチックとはどういうものかを解説。パート3「プラスチックと環境問題」では,プラスチックが環境問題となってきた過程や,何が問題となっているのかを説明します。パート4では「プラスチックリサイクルのいま」として,リサイクルに一つの章を裂き,リサイクルの実情を検証します。その中では日本の容器包装リサイクル法の問題点に切り込んだり,国連の持続可能な開発目標(SDGs)にも話題を展開しています。パート5の「脱プラスチック生活への道」では,プラスチックの使用量を減らすというだけでなく,バイオプラスチックが解決策になるのか警鐘を鳴らした上で,もう一度,プラスチックが私たちの社会とどのように歩んできたのかを概説しています。そして「おわりに」で,私たちがもっと真剣にプラスチックとの付き合い方を変えていく工夫が必要といった主旨が述べられています。
研究分野にいる人であればすぐに思いあたり,調べることができる参考文献ですが,あまり丁寧には示されていません。膨大な量の文献を全て載せられないためと思いますが,中高生でも英語の得意な人もいますから,アクセスフリーな論文をもう少しリストアップするといった工夫があると,より良かったと思います。
それを除けば,大変読みやすい海洋プラスチック問題の解説書です。
(文責: 野村英明)