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2021.08.18

プラスチック製品の消費者意識・行動を可視化~京都大学のチームが「チャート」を作成

 持続的なプラスチック管理(SPM:Sustainable Plastic Management)のあり方を考えるために役立てようと,幅広いプラスチック製品・サービスに目を向け,プラスチック汚染問題の対策を検討するためのツール「プラ・イドチャート」を,京都大学の浅利美鈴准教授らのチームが作成し,論文誌「環境と安全」(2021年12巻1号)に公表した。

論文タイトル:
プラスチック製品に対する消費者意識・行動の可視化ツール - プラ・イド チャートの提案と意義について

プラスチック製品の必要性と回避性を「見える化」

 チームは,プラスチック製品を選択・使用する消費者の意識(必要性)と行動(回避性)をつかむことが可能かつ重要ととらえ,それを「見える化」したチャートを考案した。

20210816_fig1.png チャートは,化石資源由来のプラスチック製品を「必要性:いる/いらない」「回避性:避けやすい/避けにくい」という2つの観点から,必要性を横軸,回避性を縦軸に取って4象限に分類されている。チームは「消費者個々人のプラスチック製品に対する意識・価値観を可視化し,プラスチック問題を多面的,かつ我が事として考えるきっかけとしてもらうと同時に,ステークホルダー間で共有し,今後の検討に結び付けることを狙いとした」と述べている。

 上図では,第一象限は「いらなくて避けやすいプラ」,第二象限は「いるが避けやすいプラ」,第三象限は「いるし避けられないプラ」,第四象限は「いらなくて避けにくいプラ」となっている。たとえば,第一象限に対しては積極的に削減に取り組み,第二象限では消費者の意識や行動の変容を促して,第四象限は規制や企業努力によって,それぞれ第一象限の方に移動させる。第三象限では,どうしても難しいもの以外は上記の2つの行動を取るという。

プラスチック製品44品目のアンケート調査

 チームは,2019年10月10日,京都大学で開催したSDGsに関する勉強会への参加者35人にアンケート調査を実施。調査対象のプラスチック製品は日常的な使用を想定して44品目を選んだという。

 調査結果によると,必要性については次のような結果となった。

 レジ袋やプラスチック製ストロー,それに使い捨てカトラリー(スプーン,フォーク)と使い捨ての傘袋,ダイレクトメールのプラ包装は,8割以上が「いらない」と回答。シャープペンシルやボールペン,消しゴム,歯ブラシ,ごみ袋など日常用品,また生理用品やオムツ,使い捨てマスクといった衛生用品,洗浄剤容器,洗浄剤の詰め替え用製品の包装は「いる」という回答が多かった。ペットボトルや食品トレー,使い捨て弁当容器,お菓子の個包装といった容器包装は意見が割れた。

 次に回避性。レジ袋やプラスチック製ストロー,ウェットティッシュ,使い捨てカトラリー,使い捨て傘袋,さらにプラスチック製の食器,まな板など,プラスチック素材以外の製品が多く流通しているプラスチック製品は「避けやすい」という回答が多い。一方,プラスチック製家具・収納ケースでは回答が分かれ,ボールペンや消しゴム,歯ブラシ,家電製品のボディ,電子基板,おにぎりの包装フィルム,洗浄剤容器,洗浄剤の詰め替え用製品の包装は,「避けにくい」という回答が多かった。

20210816_Fig2.PNG

必要性と回避性からプラスチック製品を分類

 チームがアンケート調査をもとに44品目について階層的クラスター分析(注1)を行ったところ,上図の通りA~Fの6群に分けられたという。

 チャートをどう利用できるか(表参照)。

 A群は約8割が「いらないし,避けやすい」と回答。A群より必要性と回避性が若干落ちるB群は回避策が一定程度,認識・許容されている。消費者の意識変容で図の右方に移せるため啓発や誘導策が重要とする。

 C群は約7割以上が「いらない」としているが,回避性の認識が分かれた。企業努力や回避策の周知拡大により,できるだけA群の方に押し上げた上で,削減対象とすることが望ましいとする。D群は必要性も回避性も意見が割れた。チームは「右上への移行を目指しつつも,特に消費者と企業等とが,プラ製品や代替品の得失等について情報交換を行い,理解を深めながら対策を検討・推進していくことが重要」としている。

 E群は,約6~9割が「いる」とする一方,約5~7割が「避けにくい」と,必要性が高く,回避性で意見が分かれる製品だ。チームは,バイオプラスチック(注2)や木材・天然素材等の代替品等,再生可能な素材の開発や普及が重要と考えられるとしている。F群は約7割以上が「いる」とし,約6割以上が「避けにくい」とするもので,使途も特性も異なる物が含まれている。チームは「当面は,長期利用やリユースを心がけ,使用後は適切にリサイクル・熱回収することが望まれる」とする。

20210816_table1.png

チャートの改善に向けて

 チームは,EUの海洋プラスチック放出削減に向けた使い捨てプラスチック規制を念頭に置いて,チャートについて「対策検討の目的を明確にした上で,対象製品群を精査したり,付加すべき情報を含めて軸を再設計したりすることの必要性と,それによる展開可能性が示唆される」という。

 具体的にはどういうことか。短期的に優先すべき削減対象製品を検討する際には,(1)消費者の合意と代替品・サービスの有無や普及レベル,(2)(海洋)環境放出量,などが重要としている。(1)はチャートの横軸で一定評価ができる。このため,(2)のデータを付け加えることで,環境放出量削減の観点から削減対象商品の重要性と実効性が見え,優先性の判断につながるという。環境放出量だけでなく,回収率や(将来的な)回収可能性も重要であり,(1)と(2)にプラスチックの素材情報も加えれば,中長期的な分別回収・リサイクルの可能性を考えるための重要な指標となるとする。

 チームは,海外のアンケート調査結果を挙げながら,「約7割はバイオプラ製品が増えることを望んでいるものの,正しい知識が十分に浸透しているとは言えない」(オーストラリア),「プラスチックの利用が温暖化につながるとの罪悪感が,高価でもバイオプラ製品を購入する原動力となっている」(オランダ)」という分析結果を示した上で,バイオプラは社会的注目度が高く,重要なリニューアブルの典型例であると指摘する。ただ,バイオプラの普及には時間や開発コストがかかるため,「消費者の支持が,一過性のもので終わることのないよう,理解を促進しつつ,短期・中長期的に導入方策を検討することが重要」と説明している。そのために,各対象製品に,素材やコスト,流通規模などの情報を加えることで,適材適所や優先順位を検討する可能性があるとしている。さらに,チャートは,継続的に類似の調査を行い,経年変化を見ることで,意識や対策の変容や進展をモニタリングすることにも活用できるとする。

さらに充実したチャートの考案を目指す

 浅利准教授の話「今回は、消費者の意識について、「いる・いらない」「避けやすい・避けにくい」で分類したが、他にも、寿命や、流通量、環境負荷など、様々な評価軸があるかと思う。どのような指標を設定すると、どのようなことが見えてくるかを検討すると同時に、対象者を拡大して調査を行い、社会一般的な傾向について、分析したいと考えている。また、一般消費者のみならず、関係業界の方々と、このチャートを用いた対話を行いつつ、回避可能性や消費者受容性を高める方策や課題について検討したいと思う」

(文責:三島勇)


注1 階層的クラスター分析 データ群の中から類似性の高いデータ同士を集めて分類しクラスター(集団)を作り,そのクラスターの数を徐々に少なくしていく手法。目的は複雑なデータを「グループ化」,「見える化」である。

注2 バイオプラスチック 微生物によって生分解される「生分解性プラスチック」及びバイオマスを原料に製造される「バイオマスプラスチック」の総称。ただし,生分解性であるからといって原料がバイオマスであるとは限らず,バイオマス由来であるからといっても生分解性があるとは限らない。
 参考:環境問題をプラスチックから考えてみる:「バイオプラスチック」とは