使い捨てプラスチック製品の12品目の削減に具体策,2022年4月から施行
2021年6月に成立した「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律(プラスチック資源循環促進法)」は,プラスチックの使用量を減らし,資源として循環する,そうした社会を目指すための法律である。本法律に基づき,2022年4月をめどに,コンビニなどで無償提供されていたプラスチック製スプーンなどの有料化などが始まる。
中央環境審議会循環型社会部会プラスチック資源循環小委員会と産業構造審議会産業技術環境分科会廃棄物・リサイクル小委員会プラスチック資源循環戦略ワーキンググループの第10回目の合同会議が2021年8月23日に行われ,「プラスチック資源循環促進法」の政省令・告示案について検討された。
政府は,消費者に無償で提供される使い捨てプラスチック使用製品(以後,「特定プラ製品」という)の12品目について,排出を抑制し,過剰な利用を減らす,あるいは代替素材への転換を促すこととした。指定された品目は以下である。
スプーン,フォーク,ナイフ,
マドラー,ストロー,ヘアブラシ,
櫛,カミソリ,シャワー用キャップ,
歯ブラシ,ハンガー,衣類用カバー
特定プラ製品を提供している業種は,各種小売業のほか,宿泊業,飲食店,さらに持ち帰り・配達飲食サービス業,洗濯業である。これらの業種には以下のような提供の工夫が示されている。
・有料化
・景品やポイント還元により,使用しないような誘引
・使用について,消費者への意思確認
・消費者に再使用を促す
特定プラ製品の提供に際しては,資源として循環しやすい設計を促し,薄肉化・軽量化,再資源化しやすい素材構成,再使用可能性向上が求められている。なお,今回対象となる事業者は,その前年度に提供した特定プラ製品の量が5トン以上(「多量提供事業者」という)となっている。事業者には特定プラ製品の削減を義務付け,取り組みが不十分な場合には勧告,社名の公表,改善命令の措置をとる。
さらに,これまで容器包装リサイクル法(以後,「容リ法」という)では対象外だったプラスチック製品の定規やバケツなどの製品を,「市町村が一括回収」すること,そのための分別の基準策定を市区町村に促している。廃棄物業者等に対しては,適切な資源化やリサイクルの効率化した処理・処分を求めている。もう一つ大切なのは,大臣認定された製造事業者などによる自主回収事業について,これまでの行政区分に縛られず広域に収集できるため,リサイクルの効率化や日頃は競争関係にある複数の事業者の協業の可能性が広がった点である。
余談だが,ここで消費者として気をつけないといけないのは,分別基準を自治体に投げているので,自分たちの地域の分別をもう一度確認する必要が出てくる。その上で,容リ法でいうペット(PET:ポリエチレンテレフタレート)製品は飲料用または醤油用のペットボトルを指し,それ以外のペット製品とは分けること,発火の原因となるリチウムイオン電池を混入させないことである(処理施設で火災が多発している)。そしてもう一つは,再生するためにはプラスチックができるだけ綺麗なことが大切で,汚れていると他の回収物が汚染され,結果的にもとは綺麗だったものまで汚染して焼却場行きになってしまうので,面倒でもできるだけ綺麗な状態にして排出することである。
ところで,EUでは2010年代に入ると,資源に関する循環経済に資する政策が打ち出されるようになった。プラスチックゴミ対策もその潮流に乗ったものとなっている。例えば欧州委員会は2019年6月の段階で「環境に及ぼす特定プラスチック製品の影響の削減に関する2019年6月5日の欧州議会および理事会の指令(EU)2019/904(Directive (EU) 2019/904 of the European Parliament and of the Council of 5 June 2019 on the reduction of the impact of certain plastic products on the environment)」を策定。その中では,特定プラスチック製品(ナイフ,フォーク,スプーンなどのカトラリー,皿やコップなどの食器,マドラー,発泡ポリスチレンの食料・飲料容器,風船用の棒,綿棒の軸,酸化分解性の全プラスチック製品)に関して流通が禁止されることになっている。そのほかにも指令では,食品容器包装やウェットティッシュ,フィルター付きタバコなどについては拡大生産者責任を導入することなど細かな点について言及されており,これらについてEU加盟国に2年をめどに対応する国内法の整備を求めている。
今回示された政策は,特定プラ製品に若干の違いはあるが,全体としてはEUの方がより踏み込んだ規制を行なっている。これはEUとして循環経済で世界をリードすることが翌2010年に発令された指令に明記されていることとも関連している。そうはいっても日本における削減策も,若干のタイムラグはあるが徐々に進んでいる。むしろこれまでの日本の政策の進め方等を勘案するとタイムラグは小さいといってもいいかもしれない。理由の一つは民間の動きにあると考えられる。
日本の多様な業種のなかで海外の市場を開拓している企業は多く,そうした企業は日本政府よりもより敏感に海外情勢に対応する。また,国内消費者の動向にも敏感で,その取り組みのいくつかが行政に先行する事例としてある。企業としてはより企業価値を上げるための活動だが,それらが結果として法整備・制度化の後押しをしているということである。別の理由としては,2018年のG7シャルルボアサミットで,日本はカナダやEU各国が承認した「海洋プラスチック憲章」を承認せず,国際社会から批判を浴びた。その経験から過敏になっているということも考えられる。
(文責 野村英明)
本サイトの関連記事:
「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律(プラスチック資源循環促進法)」が可決,成立(2021年6月4日)
「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律案」が閣議決定されました(2021/3/9)
関連サイト:
プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律案の閣議決定について
今後のプラスチック資源循環施策のあり方について
https://www.env.go.jp/council/03recycle/210128pla.pdf (2021年2月24日閲覧)
第4次循環型社会形成推進基本計画
https://www.env.go.jp/recycle/circul/keikaku.html (2021年6月8日閲覧)
プラスチック資源循環戦略
https://www.env.go.jp/press/106866.html (2021年6月8日閲覧)
本文中のイラスト:いらすとや