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2021.11.15

出版物の紹介 『プラスチックのうみ』(ミシェル・ロード 作,ジュリア・ブラットマン 絵)

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『プラスチックのうみ』
  ミシェル・ロード 作,
  ジュリア・ブラットマン 絵,
  川上拓土 訳,磯辺篤彦 監修
  小学館刊 1500円+税

 表紙の紺碧からライトブルーまでのグラデーションにまず目を引かれる。左上には小さなボートに乗った子ども4人がいる。アザラシやウミガメ,魚がうっすらと描かれる。その周りにはプラスチックのボトルや袋,おもちゃが浮く。それらの破片,捨てられた漁網が海に沈みこんでいる。それを見ている子どもたちは思案顔だ。海洋プラスチック汚染の現状をシンボル的に表している。

 プラスチック汚染は悩ましい問題だ。プラスチックは耐久性があるうえ,安価で成型しやすく,利用範囲は非常に広い。プラスチック製品は,大げさではなく私たちの生活には欠かせないものになっている。評者も毎日生活する中,分別袋にたまり続けるプラスチックを見ているだけで,どれだけプラスチックに依存しているかを実感する(最近はなぜか後ろめたい気持ちにもなるのだが)。

 絵本はアメリカの作家2人によるものに小学5年生の川上拓土さんによる日本語訳がつけられている。内容は平易だが,絵とことばが相まってプラスチック汚染の実態とその影響を静かに訴える。

 「ごみです。ぼくたちがすてた ごみです。」から始まり,プラスチックのごみに汚染された海で泳ぐ魚,それを食べるアザラシ。そのアザラシが漁船から捨てられた網に絡みつく。海を漂う捨てられたプラスチック袋などがウミガメに引っかかる。ごみの埋め立て地がプラスチックのごみを海に「ばらまく」。それを捨てているのは「ぼくたち にんげんです。」。

 しかし,汚したのが人間なら,汚染を取り除くのも人間と訴える。子どもたちは,ごみを出さない,リサイクルする,漁網などをうみから取り除く,と宣言し,実行する。未来――。クジラたちは「きれいなうみを 泳ぐのです!」。

 児童向きだが,巻末に「プラスチックのうみのいま」として,海洋プラスチック汚染の実態や悪影響,汚染の抑制策などのミニ解説がある。たとえば,世界中から毎年800万トンものプラスチックがごみとして海に流れ出ているが,このままにしておくと2050年には海に漂うプラスチックの重さは海にすむ魚の重さよりも重くなるといわれていると指摘する。そのプラスチックが自然分解する時間は,プラスチックボトル450年,歯ブラシ500年,つり糸600年,プラスチック袋最大1000年と記す。

 海を多様な青色を使って美しく描いているだけに,プラスチックごみの醜悪さが際立つ。親子で見て,読めば,プラスチック汚染問題を考えるきっかけ,話し合いの端緒になると思う。

(三島勇)