Columns & Reportsコラム・レポート

2022.11.14

逗子市と共同でワークショップを開催しました

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テーマ3の「プラスチックごみ削減方策に関する社会科学的研究」では,どうしたらプラスチックごみを減らすことができるのかを考えるために,神奈川県の逗子市と連携して,市民が参加する調査体験や対策を考える企画を2022年6月から始めています。



市民が行政や地域社会と協力して,海洋プラスチックごみを減らす実践的な方法を確立するため,東京大学生産技術研究所のマイルス・ペニントン教授らの海洋観測ネットワーク(OMNI)チームは,東大未来ビジョン研究センターの城山英明教授(国際行政論,科学技術と公共政策,政策過程論)や京都大学大学院の浅利美鈴准教授(環境教育論)らとともに,沿岸住民や自治体が協働して,海ごみ削減の手法と仕組みを「デザイン」するパイロット事業を創り上げることを目指しています。

この「デザイン」は,「どうしたら人間は幸せになれるのか」という視点から,社会の仕組みやサービス,体験までを創造するという意味を持ちます。デザインの力で,工学,社会科学の双方と市民の知恵を融合し,社会に貢献できる仕組みを創り出すのです。

チームの木下晴之特任助教は「海洋プラごみ削減につながる市民参加型の活動に役立ち,自治体の条例や政策に取り込める仕組みを作るため,市民のアイデアを「提示→実践→改良」の中で「いいもの」にしていきます」と意欲をみせます。

チームは,逗子海岸を有する神奈川県逗子市で,市民と市職員,研究者らが参加するワークショップ(体験型講座)を開催しています。最初に開かれたワークショップでは,研究者からの指摘で,参加者らはプラスチックへの向き合い方は人によって違いがあり,大きな課題は無関心層にどう問題を意識してもらえるかであることがわかりました。その後,参加者がいくつかのグループに分かれ,「理想の逗子海岸」(たとえば「裸足で歩ける海岸」)を描き,その実現へのアイデアを出し合いました。逗子海岸ではフィールドワークもおこなわれました。チームは,ワークショップやフィールドワークをそれぞれ3,4回実施し,そこで生まれたアイデアを形にしていきます。

今後,海洋ごみに関して愛媛県四国中央市などと連携する中で,同様の事業をおこなえるかどうか可能性を探りつつ,沖縄県での実施も検討しています。

城山教授は,海洋プラごみの「下流」のビーチクリーンのみならず,「上流」の発生源の削減対策の意義を強調し,両局面のプラごみ対策について,個人や行政,産業界の関心,課題を明らかにした上で,「沖縄のような島々や逗子市のような大都市近郊地域,瀬戸内海という閉鎖海域で隣接する地域など,地理的に大きく異なる地域ごとに,ステークホルダー(利害関係者)が連携できる方法と,その方法に実効性を持たせる政策を明らかにします」と,この事業の目標を述べます。また「地域と密着しているOMNIチームや浅利准教授の研究室などと連携し,その地域で必要とされる具体的な政策の提言も行います」と話しています。

浅利准教授は,「今や,多くの人に,プラごみやマイクロプラスチックの問題は知られています」と指摘したうえで,この事業は「その実態や将来の可能性を,より正確に把握することが目的かと思います。ただ,それが多くの人の行動や社会変容につながらないのも,大きな課題で,そこに切り込むミッションでもあります」「消費者行動や,ステークホルダー・社会システムの構造を知り,変容のためのメカニズムや仕掛けを検討し,実践的研究としても,変容を作り出し,モデル化すること」を目標としたいとしています。

(ライター:三島 勇)


*市民参加型科学プロジェクト『OMNIマイクロプラスチック』は2022年度グッドデザイン賞を受賞を受賞しました。
 https://fsi-mp.aori.u-tokyo.ac.jp/2022/10/omni2022.html
*OMNIのマイクロプラスチックホームページ
 https://www.omni-mp.designlab.ac/