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2022.02.19

「プラスチック資源循環促進法」で変わるプラスチックごみの回収

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 2022119日に「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律(プラスチック資源循環促進法,以後プラ新法)」に関連する省令等の公布とともに,「プラスチック使用製品廃棄物の分別収集の手引き」が公表された。


<ゴミの減量のためにまずは分別>

 横浜市は200318日,「横浜G30行動宣言~350万人の挑戦~」を宣言した。2010年度におけるゴミ排出量を,2001年度実績に対し,30%削減する計画である。2001年度161万トンを2010年度に30%減の113万トンとすることを目指したのだが,実際は2005年度末で106万トンと,約34%減少させることに成功した。5年早く目標を達成したが,この間,横浜市の人口は増えていたことから考え,自治体・町内会単位で住民説明会を開催したり,理解と協力を積極的に求め,出前講座などを実施した横浜市の細かな働きかけが効果的だった可能性がある。
 横浜市ではごみを分別することで全体のゴミの量を減らした。分別をすることはリサイクル率を上げる,すなわち資源化の効率を上げるために大切だ。プラスチックごみには様々な製品が含まれ,ごみ全体に占める割合も大きい。分別は全国一律の方がわかりやすいのだが,自治体の財政や人口の疎密による収集効率などで個別の事情がある。
 そこでまず自治体には,これまでと変わった点をわかりやすく「ごみ出し方法」を示してもらいたい。そして,私たちはプラ新法によるごみ分別の方向性を知っておく必要がある。

<プラスチックごみの分別基準が変わる?>

 「20224月から動き出す「プラスチック資源循環促進法」はどんな法律」では,プラ新法の概要を説明したが(1),ここではゴミ回収に関わるゴミの分別を中心に見ていく。
PET_PLA_marks.png 私たちはこれまで「容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律(容リ法)」を基に作成した自治体の分類に従って図のようなマークがついたプラスチックゴミを回収に出してきた。この部分は変わらないが,プラ新法ではこれまで容リ法では対象外だったプラスチック製品(以後,プラ製品),例えば,CDケースや定規,バケツなどのPETやプラマークがついていない製品を,「市町村が一括回収」すること,そのための分別の基準策定を市区町村に促している。廃棄物業者等に対しては,適切な資源化やリサイクルの効率化した処理・処分を求めている。
 これからの区分では細かなことが今までとは違う。例えば,横浜の場合,プラ製の雨合羽は可燃ゴミだったが,これからは資源ごみになる。同じように現在可燃ごみ扱いのプラ製のカバーのLED電球は小さな基盤が入っているので電子ごみになるのか,あるいは別途資源回収するのかといった細かなところがわかりづらい。それぞれの自治体の処理能力などによっても分別基準が異なってくる。自治体には早急に分別の基準を徹底周知してもらいたい。そして私たちは自分の暮らす自治体のホームページを見たり窓口に行って,ゴミ分別のルールがどう変わったかを確認することが大切だ(2)

<分別回収での注意>

 プラスチックごみを資源として扱うには,これまで以上にきちんと分別する必要がある。ごみは,きちんと分別ができていないとリサイクルに適さないし,原料としてある程度の量が安定的にしかも質の良い状態でないと効率が悪い。

|ゴミの混入や汚れたプラごみはリサイクル率を下げる|
 異物混入がリサイクル率を下げる。リサイクル率が高いとされるペットボトルでも,飲み残しや吸い殻などが入っていて焼却されている場合も多い。また,自治体が提携するリサイクル事業者の技術にもよるが,食べ物の残りや土砂が付着した,汚れたプラごみはリサイクルできない。中身は使い切って,ゆすぐか汚れを拭き取るなどして,綺麗なごみを出すことを心がけることが資源化には大切だ。
 ゴミの回収作業にたずさわる事業者は私たちの生活を維持する大切な存在だ。資源としてリサイクル率を上げるというだけでなく,円滑に作業できることへの配慮を心がけることが大切だ。筆者の自治体ではプラスチック回収の日がある。特に指定はされていないが,プラスチックをポリエチレン,ポリプロピレン,ポリスチレン,そのほかに分けるようにしている。種ごとに分けても自治体の分別基準ではないので今の所意味はないが,今後こうしたことも必要になるかもしれない。また,紙シールが付着しているものはできるだけ剥がし,洗って乾かしている。油がべったりのものや,洗っても臭いが取れないものは,不燃ゴミとして分けるようにしている。

|ペットボトルやプラマークの資源回収は今まで通り|
 これまで,容リ法に従って資源回収していたポリエチレンテレフタレート(PET)製の容器(醤油や飲料用ペットボトルなど)やプラマークのプラごみは,今まで通り資源回収が続けられる。

50センチ以上のプラ製品や厚さ5ミリ以上の厚さのある製品は回収されない|
 プラ製品であても,最長部分が50センチを超える製品や厚さが5ミリ以上あるアクリル板やまな板は回収されない。ラケットやゴルフ倶楽部のシャフトなどガラス繊維や炭素繊維で強化されたプラ製品や,自然繊維などとの複合素材のプラ製品については,サイズや性質によって粗大ゴミなど別の扱いになる場合もあるので,自治体の分別基準を確認する必要がある。

|充電式のプラ製品は注意|
 リチウムイオン電池や電池使用製品は強い衝撃が加わると発火の恐れがあり危険だ。ごみ収集車やリサイクル工場での発火炎上事故は頻発している。電池だけでなく,バッテリーパックや電池を使用した小型家電はプラスチックに覆われていても自分で判断せず,今一度自治体基準を確認して,指定の回収方法に従い,どうしてもわからない場合は自治体ホームページや窓口に問い合わせる心がけが必要である。
 資源の多くを輸入に頼っている日本にとって,特に充電池として使われるリチウムは大切な資源だ。本来であればリチウムについては,プラスチック問題ではなくゴミ全体としての問題であり,包括的対策が必要だ。この点は国として踏み込んだ取り組みが求められるところである。

|処理に注意が必要なプラ製品|
 プラスチック製の注射器あるいは感染の恐れがある様な医療用品はプラマークが付いていても自治体によって回収の方法は異なるので注意が必要。

<実際の再資源化の現場の例>

 2019年秋に,神奈川県川崎市にある昭和電工KPRのプラスチックケミカルリサイクルのガス化プラントを取材した(3)。この工場では,使用済みプラスチックを再利用するためにアンモニア原料化している。同時に出る炭酸ガスはドライアイスや液化炭酸ガスとして利用されている。また,アンモニアを作る前にできる水素は水素自動車や発電の燃料などに使用される。
 昭和電工では自治体の回収したプラごみを入札によって仕入れてリサイクルしている。そこでごみに関して,困った点を聞いてみた。多くの点は上記に重複するが,生の声としていくつか記すこととする。

  • 一括入札なので難しいが,品質の良い原料(分別がよくされているプラスチック廃棄物)をできるだけ取るようにしている。言いづらいが,地域によって混入が多い地域とかもある。学生が多い地域は分別がよくされていないことが多い。また,工場周辺の自治体の原料を使っている。広範囲から長距離輸送するのは環境負荷を増やすことになってしまうので気を使っている。
  • 異物混入があると工場が止まる場合がある。金属混入で破砕機の刃が欠けたりする。実際,文鎮が入っていた事例がある。
  • リチウム電池は破砕時に刃が当たると,衝撃で出火する。実際に出火事案は多数発生している。
  • 生ゴミ混入の場合,点検等でコンベアが止まった時に,腐敗して周辺地域に異臭が漂い迷惑をかける原因になる。

<今後の課題>

 今回のプラ新法の活用に関しては,伝わる広報に積極的に取り組むことが国には強く求められる。伝える努力をしてもらいたい。また,法律の実効性をモニタリングデータを公開し定量的評価を行うこと,それに基づいて,法律あるいは政令・省令を改めてより実効性のあるものに更新していくことが重要だ。また,消費者においても,今後は,プラ製品の値段に処理費を含めるということも考える必要があるのかもしれない。

(文責 野村英明)


*注

  1. 環境問題をプラスチックから考えてみる:20224月から動き出す「プラスチック資源循環促進法」はどんな法律
    https://fsi-mp.aori.u-tokyo.ac.jp/2022/02/20224.html
  2. 環境省から2022119日に,「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律施行令等の公布及びプラスチック使用製品廃棄物分別収集の手引きについて」という発表があった。プラスチック使用製品廃棄物の分別最終の手引き」は以下から入手できる。
    https://www.env.go.jp/press/files/jp/117382.pdf (2022119日閲覧)
  3. ケミカルリサイクル
     使用済みの資源を化学反応によってリサイクルすることで,廃食用油をディーゼル燃料や石鹸にすることが知られている。プラごみを原油に近い状態に戻したり,原料に戻して再製品化したり,あるいは化学原料利用としてガス化し水素を製造することもこれに含まれる。

本サイトの関連記事

 使い捨てプラスチック製品の12品目の削減に具体策,20224月から施行
https://fsi-mp.aori.u-tokyo.ac.jp/2021/09/1220224.html

 「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律(プラスチック資源循環促進法)」が可決,成立(202164日)
https://fsi-mp.aori.u-tokyo.ac.jp/2021/06/202164.html

 「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律案」が閣議決定されました(2021/3/9
https://fsi-mp.aori.u-tokyo.ac.jp/2021/03/202139.html

 環境問題をプラスチックから考えてみる:「バイオプラスチック」とは
https://fsi-mp.aori.u-tokyo.ac.jp/2021/02/post-18.html

 環境問題をプラスチックから考えてみる:海は灰皿ではない
https://fsi-mp.aori.u-tokyo.ac.jp/2021/06/post-22.html

関連サイト

プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律案の閣議決定について
  https://www.env.go.jp/press/109195.html (202139日閲覧)

今後のプラスチック資源循環施策のあり方について
  https://www.env.go.jp/council/03recycle/210128pla.pdf (2021224日閲覧)

4次循環型社会形成推進基本計画
  https://www.env.go.jp/recycle/circul/keikaku.html (202168日閲覧)

プラスチック資源循環戦略
  https://www.env.go.jp/press/106866.html (202168日閲覧)