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2022.01.28

環境と持続性を考える -5-:国外の情勢 (4) リオ+20「我々の望む未来」からポストMDGsへ

第2回地球環境サミットからリオ+20まで

 1997年に科学誌「ネイチャー」にメリーランド大学のロバート・コンスタンザ氏ほかが「世界の生態系サービスと自然資本の価値」という論文を発表した(*1,2)。あってあたり前な自然環境や生態系は,具体的な数字で価値を推し量ることができなかったために無秩序に開発されてきた。そのことで人間の幸福や繁栄が妨げられる可能性が出てきたと警鐘を鳴らした。例えば,1994年の値として,1年あたりの価値に表すと,海は21兆ドル,陸は12兆ドルで,海の生み出す価値は陸よりも高くなった。海のうちでは沿岸部が高く12.6兆ドルと陸と同じレベルになっている。なお,陸のなかでは,森林(4.7兆ドル)よりも湿地帯(塩性湿地,マングローブ帯,沼沢,氾濫原)の方がわずかに高い4.9兆ドルとなっている。

 さて2005年になり,ミレニアム生態系評価(MA)が終了した(*3)。その報告で「生態系サービス」の低下が人類の繁栄に悪影響を及ぼす可能性があることが指摘され,国際社会は改めて環境や生態系の保全に目を向けることとなった。生態系の劣化は,必然として人類の持続可能な存続に関わる大きな問題であり,その対応をすべての国・地域で考える必要があることは言を俟たない。

 生態系の劣化に影響を及ぼす現象には気候変化(Climate Change)がある。

 このことに関連して2006年,スターン・レビューが英国政府から発表された。このレビューの重要なメッセージは,"気候変化に対して強く早期の行動を起こすことの便益は,そのことによるコストを上回る"ということである。数値モデルでは,急激かつ大規模な気候変化の場合,世界の損失はGDPで平均5~10%,貧しい国々では10%を超えると試算される(世界銀行が公開しているデータでは,世界の実質GDPは2019年で約85兆ドル:1ドル110円とすると9350兆円相当)(*4)。

 翌2007年,生物多様性版のスターン・レビューとも言われる「生態系と生物多様性の経済学(TEEB)」(*5)を取りまとめるプロジェクトが始まった。報告書は,2008年の生物多様性条約第9回締約国会議の閣僚級会合で中間報告が発表され,最終報告書は2010年の生物多様性条約締約国会議第10回(名古屋)で公表された。

 TEEBは生物多様性の経済価値を分析して,失われた場合の損失や修復にかかるコストの目安を示すことで,全球的な生態系と生物多様性の保全に結びつけるために,政策決定者,企業さらには市民に向けられた報告書である。この中では,自然資源の公平な分配は貧困削減につながり,環境を保全する健全な経済が必要であること,自然から得られる無形の価値の大切さや経済活動の持続性との関係を印象付けた。そしてまた,「生態系サービスへの支払い」という考え方が前面に押し出されている(*6)。このように,生態系や地球の劣化に関しては,気候変化とも結びついて,国際社会の中では大きな危惧が共有されてきていた。

 さらに2009年になって,科学誌「ネイチャー」にコペンハーゲン大学のロックストローム氏ほかによる「地球の限界:人類の安全な作動領域を探査する」(*7)という論文が掲載された。これは,生物多様性の損失速度,地球レベルでの窒素やリンの循環,気候変化,淡水の消費など,自然システムにおける地球の限界を診断したものである。彼らは惑星の持つ安定性や回復力の限界内で貧困撲滅や経済的繁栄を求めるべきであると主張し,いくつかの点(生物多様性の損失速度,窒素の過剰供給,気候変化)はすでに限界を超えているとした。そして,詳細な閾値を知るために全球での継続的なモニタリングの実施を提唱している。彼らの主張からは,それぞれ単独で決定的役割を果たす気候変化と生物多様性の豊かさはその一方で多くの項目に支えられ,相互作用を持っていることから,地球が人類を支える能力をどのくらいもつのか見極め,その範囲内で活動しなければ,持続的な社会は望めないという警鐘である。

 持続可能性の実現に向けては,2012年1月に「地球の持続可能性に関するハイレベルパネル」(*8)が,国連事務総長の潘基文(パン・ギムン)氏に報告書「強靱な人々,強靱な地球:選択の価値ある未来」を提出し,2012年の国連持続可能な開発会議に向けては会議の開始前に,科学の分野からだけでなく,現職の首脳や閣僚あるいはその経験者から政治的なメッセージが発せられた。そして特に注目したいのは,国連⼤学地球環境変化の⼈間・社会的側⾯に関する国際研究計画(UNU-IHDP)と国連環境計画(UNEP)が中心となって作成した『包括的「富」に関する報告書2012』である。

 本報告書は「国連持続可能な開発会議(リオ+20)」に合わせて発表された(*9)。報告書は冒頭で,1987年のブルントラント委員会の報告書「我ら共有の未来(Our Common Future)」で示された方向性,すなわち「環境問題は政治的な課題であり,個別にある環境課題は開発と切離できない」ことから「持続可能な開発(あるいは発展)」という概念を提示したにもかかわらず(*10),国際社会は具体的な取り組みを進展させないまま25年が経ち,状況は悪くなるばかりだったと指摘した。また,MAについても,それまでの半世紀に起こった生態系サービスの物理的変化を定量することはできたが,市場で取引されない生態系サービスの損失に価値をつけることはできなかったという厳しい評価を下している。

 富とは,ある経済の資本資産基盤の社会的な価値。資本資産とは,主に「自然資本」「人口資本」「人的資本」のことで,加えて,知識,人口,制度,時間がある。本報告書で提唱しているのが,これまでの豊かさの指標では,例えば国内総生産(GDP)が表しきれなかった富を補足する新たな指標「包括的富指標(IWI)」(*11)である。この指標は,先述の資本資産を含めた,国の資産全体を評価し,数値化することで持続可能性の変化を国際比較することや,豊かさと成長の持続可能性を提示している。

 自然資本について取りまとめた本報告書は,環境,生態系,持続可能性というものが相互に関連して,人間の生存あるいは社会活動にとって欠くべからざるものであることを改めて示した。そして本報告における提案は,自然に基づいた資本(自然資本)を国民の会計計算に組み込み,人間の福祉の変化を測る指標を広め,それらのことによって豊かで持続可能な開発を全世界的に構築することを目指すものである。翌2013年1月に日本の国連大学本部で行われた「持続可能な社会の構築に向けて~『包括的富指標』とは~」において,学長のコンラッド・オスターヴァルダー氏はあらためて「ミレニアム開発目標(MDGs:*12)達成に向けて『生態系サービス』の価値と国富を関連づけて考慮する『自然資本会計の枠組み』が必要である」と述べ,包括的富指標の使用を進めるべきと提言した。

2012年,国連持続可能な開発会議(リオ+20):「我々の望む未来」

 1992年の地球環境サミットからの20年で,持続可能な社会を目指して新興国,民間企業あるいはNGOなどで活動が多様化してきた。しかし,文頭で述べたように地球環境を憂慮する報告が次々と発表され,さらに包括的「富」報告書でも述べられているように,経済成長の偏重は将来の世代に深刻な被害をもたらし,資源を枯渇させると指摘している。冷戦終結後の世界は,富の集中や貧困の拡大,環境破壊が進み,その破壊が貧困を生む悪循環に陥りつつあった。

 こうした状況下で,2012年6月,ブラジルのリオ・デ・ジャネイロにおいて「国連持続可能な開発会議(リオ+20)」が開催された。会議では,人間環境宣言(1972年)(*13)や「共通だが差異ある責任」を含むリオ原則(*12)の再確認,これまでの主要サミットにおける成果と残された課題の評価や,新たに現れた課題の共有,そして世界からの貧困の解消,さらに持続可能な開発のための枠組みづくりなどについて議論された。そして成果文書「我々の望む未来」(*14)が採択された。

 「我々の望む未来」の中では,先の包括的富指標の提案に沿う形で,政策決定により良い形で報告がなされるために,国民総生産(GDP)を補完する広範囲な進捗尺度が必要であることを認識するとしている。また,持続可能な開発および貧困撲滅の文脈における「グリーンエコノミー(グリーン経済)」(*15)を各国共通の取り組みとして認識したことも示された。さらに持続可能な開発における環境の柱として,主要な国連協議機関への国連環境計画(UNEP)の関与を強化することで,環境に関する国連規模の戦略策定を主導する権限をUNEPに持たせるとした。

 そして,行動とフォローアップとしては,MDGsの2015年までの達成を早期実現するために全力を尽くすというコミットメントを再確認した上で,2015年以降にこれまでの貧困撲滅や持続可能な開発などの国連の方針と整合的かつそれらを統合した持続可能な開発目標に関して,全ての利害関係者に開かれた包括的かつ透明な政府間交渉プロセスを開始することが合意された。ポストMDGsにむけて開かれた作業部会が活動を開始することになった。

 環境の持続可能性は持続的な社会経済開発と貧困撲滅のための必須の条件である。予想される環境問題を緩和し,あらゆる地域での暮らしを改善する上で,健全で管理が行き届いた多様な生態系と資源は重要な役割を果たす。したがって,ポスト2015開発アジェンダが社会経済的持続可能性と環境的持続可能性の関連を反映し,環境を支柱として守り,強化することはもはや不可欠という認識のもと,ポストMDGs(すなわち,新たな"持続可能な開発目標(SDGs)")をどうするか議論が始まった。

2015年,ポストMDGsへ

 MDGsは8つの目標群で構成されていたが(*12),貧困・飢餓の撲滅,初等教育の普遍化,ジェンダー平等,幼児・妊産婦の保護,疫病等蔓延阻止など,保健関係に複数の目標が偏り,目標7の環境や目標8の開発を促すイノベーションや資金的裏付けはどうみても小さい扱いであった。特に目標7「環境の持続可能性の確保」の中に盛り込まれている4つのターゲットのうち2つは,安全な水の確保や衛生であり,スラム居住者の生活環境改善と,資源や生物多様性の損失抑制といった地球環境の持続性に関して独立した目標とはなっていなかった。

 2015年7月,国連はミレニアム開発目標(MDGs)について報告し,開発アジェンダとして極度な貧困の改善などに成果はあったものの,世界人口の40%が水不足にあること,海洋の水産資源の乱獲など改善すべき点は多々あることを認め,開発アジェンダとしてMDGsがやり残した課題をあげた。また,1990年から二酸化炭素排出量が50%以上も増えていることや,全球での気候変化が開発の最も大きな障壁になりつつあるとの認識が広がり,7番目の目標が開発目標のポストMDGsにおける中心的な柱であり,開発目標に本格的に統合することが重要課題であるとされた。

(文責:野村英明)

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  1. de Groot, RS (1987): Environmental functions as a unifying concept for ecology and economics. Environmentalist, 7, 105-109.
     生態系サービスという考え方の最初は,筆者の知る限りでは,コンスタンザ氏らの論文の共著者になっているデ・グルート氏の論文「生態学と経済学の統一概念としての環境機能」ではないかと思う。漁業を思い浮かべるとわかりやすいが,環境中で生み出された「無料の自然物」をある程度の資本投入によって価格をつけて販売している有価商品について,デ・グルート氏はこうした恵みを生み出す環境の機能,すなわち自然物はサービスであり,これらは人間のwelfare(幸福な生活や繁栄)にとってなくてはならないものであり,なんらかの経済的手法で評価する必要があると表明した。
    Costanza R, R d 'Arge, R de Groot, S Farber, M Grasso, B Hannon, K Limburg, S Naeem, RV O'Neill, J Paruelo, RG Raskin, P Sutton & M van den Belt (1997): The value of the world's ecosystem services and natural capital. Nature, 387, 253-260.
     筆者らは,生態系サービスとそれを生み出す自然資本の蓄積は地球の生命維持システムの機能にとって重要であるとし,それらは直接間接に人間の福祉に貢献するので,人類の総経済的価値の一部という。いくつかの計算式を用いて,地球生態系を16のバイオームに分け,17の生態系サービスとして経済価値を推定したところ,生物圏全体で,市場価値の外にあるその価値は,年間16~54兆米ドルで年間平均33兆米ドルと推定した。
     この計算には生み出されるサービスに金額をつけたものなので,修復や維持に関わること,例えば,土壌の質を保つミミズや受粉を助けるミツバチなどの役割は,数値に含まれていないので,全てを金額に置き換えた場合,これらの作用についてかなりの過小評価が生じていると考えられる。筆者らも「最小限の見積もりである」ことを断っている。
    バイオーム:biome,生物群系。ある気候条件の地域で,それぞれの条件下での安定した動植物群集をいう。熱帯雨林,ツンドラなど,一定の環境・地域にみられる特徴的な生物群集の一単位として扱う場合が多いが,国連のMAでは温帯広葉樹林や山岳草原のように地球全体での区分に適した"生態系の最も大きな単位"としている。
  2. 生態系サービス: 経済的に取引をした時に,有形無形にかかわらず,価格価値以外で得られる便益をサービスというと思うが,生態系から人類が得ている様々な利益を「生態系サービス」という言葉で表している。
    「環境と持続性を考える 4:国外の情勢 (3) 「地球環境サミット」から「ミレニアム開発目標」「持続可能な開発に関するヨハネスブルグ宣言」(https://fsi-mp.aori.u-tokyo.ac.jp/2021/09/4-3.html)」の注11を参照。
  3. ミレニアム生態系評価(Millennium Ecosystem Assessment: MA): MAは,アナン国連事務総長の呼びかけに端を発して実施された。生態系の保全が持続可能な社会および人類の福利にとって大切である。この生態系の変化を科学的に評価する,そしてその評価を各国の政策に反映することを目的に,2001-2005年に国連環境計画(UNEP)が事務局となって行われた。MAの報告書においては生態系の劣化による強い危機感が表明されている。
    国連ミレニアム生態系評価「生態系サービスと人類の将来」(Millennium Ecosystem Assessment編,横浜国立大学21世紀COE翻訳委員会責任翻訳),オーム社,241 pp.,2007年.
     なお,環境省は下記のようにミレニアム生態系評価を簡略化して1ページの概要にまとめている。 https://www.env.go.jp/press/files/jp/25570.pdf (2021/1/9閲覧)
  4. Stern Review(気候変化の経済学におけるスターンレビュー): 英国財務省が実施した気候変化の経済活動への影響を総説した報告書。責任者の経済学者ニコラス・スターン氏の名をとって,スターン・レビューと呼ばれている。
     排出量を大幅に削減するためには,きわめて高額なコストがかかるものの,実現可能な水準ではある。レビューは二酸化炭素換算500~550ppmでの安定化に伴う年間コストを,GDPで2050年まで,およそ1%と試算している。これはきわめて大きな挑戦であるが,高炭素から低炭素への世界構造のシフトに伴い,低炭素,高性能な機器やサービスを扱う市場の拡大など,ビジネスの好機でもある。
     温室効果ガス排出量を削減するコストは,手法の組み合わせと,対象とする部門の選択如何によって変化する。例えば,1)温室効果ガス排出量の大きな機器やサービスの需要を抑制,2)エネルギー効率を高め,エネルギーコスト抑制と排出量削減の両立,3)森林減少の防止など非エネルギー起源の排出対策の推進,4)電力部門,熱供給部門,交通部門における低炭素技術への転換,などがある。
    Stern Review on the Economics of Climate Change: Executive Summary(日本語版翻訳),環境省・駐日英国大使館企画・監修,AIMチーム・国立環境研究所訳,2006年.
     https://www.env.go.jp/press/files/jp/9176.pdf (2009/12/14閲覧)
  5. 生態系と生物多様性の経済学(TEEB:The Economics of Ecosystem and Biodiversity): TEEBの報告書を取りまとめるプロジェクトは,欧州委員会,ドイツ,国連環境計画(UNEP)などが協力して研究を進められた。目的は,生物多様性と生態系サービスの大切さを認めた上で,その価値を可視化して,保全や再生への行動や意思決定に移すことである。
    2008年の中間報告書:日本語訳(翻訳/発行:住友信託銀行/株式会社日本総合研究所/財団法人日本生態系協会) https://www.jri.co.jp/MediaLibrary/file/service/special/content5/corner28/teeb/STB_TEEB_081202.pdf (2011年2月15日閲覧)
     環境省自然環境局自然環境計画課生物多様性施策推進室「価値ある自然|生態系と生物多様性の経済学: TEEB の紹介」 https://www.biodic.go.jp/biodiversity/about/library/files/TEEB_pamphlet.pdf (20211013閲覧)
     その後,生物多様性に関連する経済学に関しては,英国財務省が経済学者パーサ・ダスグプタ氏のチームに依頼してまとめた報告書「生物多様性の経済学(通称:ダスグプタ・レビュー)」を2021年2月に発表した。英政府は今後の政策や法規制に,本報告の分析を反映させていくとしている(ちなみにダスグプタ氏は,後述する「包括的富報告書(Inclusive Wealth Report: IWR)」(2012年版)作成の際の国連大学地球環境変化の人間・社会的側面に関する国際研究計画の科学委員会座長であり,報告書の科学アドバイザーを務めている。)。
     ダスグプタ・レビューでは,最初に,条件が同じであった場合,一旦劣化した自然を回復させるよりも,最初から保全して管理する方がコストがかからないことや,市場に委ねては生態系の乱用を防ぐことはできないことを示した。そして,生物多様性と生態系サービス,自然の複雑性,環境の外部生,共有資産の管理,包括的富指標などを分析した。その結果として,会計制度の中に自然資本の考え方を導入することや,金融と教育に関して自然資本の捉え方についての変革が必要であることを論じた。
     また,人間も経済も自然の一部に組み込まれていて,人間の需要は自然の供給能力を超えてはならない。生物圏は有限であり,世界経済も有限である。1992年から2014年までに1人あたり人口資本の価値は2倍に,人的資本は約13%増えたが,自然資本は40%近く減少した。こうしたことから生物多様性の減少は徐々にGDPにも打撃を与えると予測。
     著者のダスグプタ氏は朝日新聞のインタビュー(The Asahi Shimbun Globe, 2021年10月3日, No. 246)で「生態系は我々に多くの異なったサービスを提供してくれる。一つがダウンすれば徐々に他もダウンする。」「強調したいのは今までの経済学が本質的に自然を取り入れていないということだ。」と答えている。TEEBの最終報告書が発表されたのは2010年で,この2021年のインタビューまでの経過年数を考えるとTEEBの警鐘が十分に顧みられていないことに対して改めて発せられた警告と言える。
    WWFジャパンによる日本語版「生物多様性の経済学:ダスグプタ・レビュー要約版」
     https://www.wwf.or.jp/activities/data/20210630biodiversity01.pdf (20211013閲覧)
    The Economics of Biodiversity: The Dasgupta Review
    https://assets.publishing.service.gov.uk/government/uploads/system/uploads/attachment_data/file/962785/The_Economics_of_Biodiversity_The_Dasgupta_Review_Full_Report.pdf (2021年3月29日閲覧)
  6. 生態系サービスへの支払い(PES: Payment for Ecosystem Services): 生態系サービスを享受している人々が,生態系の保全や管理に対して支払うことをいう。
  7. Rockström, J, W Steffen, K Noone, Å Persson, FS Chapin III, E Lambin, TM Lenton, M Scheffer, C Folke, H Schellnhuber, B Nykvist, CA De Wit, T Hughes, S van der Leeuw, H Rodhe, S Sörlin, PK Snyder, R Costanza, U Svedin, M Falkenmark, L Karlberg, RW Corell, VJ Fabry, J Hansen, B Walker, D Liverman, K Richardson, P Crutzen & J Foley (2009): Planetary boundaries: exploring the safe operating space for humanity. Ecology and Society, 14: 32
     https://www.ecologyandsociety.org/vol14/iss2/art32/ (2021/8/20閲覧)
     ロックストローム氏は写真家のクルム氏と組んで,上記論文を元に,地球の限界についての書籍を出版している。本書は写真集の形態を取りつつ,論文の内容を説明し,さらに論文発表から5年後の2014年の状況を加筆している。なお,本書では,論文で限界を超えている項目が更新されており,優先度の高い順に,生物多様性の損失速度,窒素とリンの全球での循環の不調,土地利用の変化,気候変化,となっている。
    小さな地球の大きな世界:プラネタリー・バウンダリーと持続可能な開発(ロックストロームJ,Mクルム著),丸善出版,242 pp., 2018年.
  8. 地球の持続可能性に関するハイレベル・パネル: 議長を含めメンバーは22名。各国の首脳や閣僚で現職あるいは経験者などで構成。2012年1月時点でパネル共同議長は,フィンランド大統領タルヤ・ハロネン氏と南アフリカ大統領ジェイコブ・ズマ氏。ハイレベル・パネルは1987年のブルントラント報告書「我ら共有の未来」に基づいた長期構想を実現することを目的としている。それはすなわち,気候変化と闘い,そのほかの数々の地球の限界を考慮しつつ,貧困の撲滅,格差の是正,包括的成長を実現し,生産と消費をより持続可能なものにすることである。
    最終報告書「強靭な人々,強靭な地球:選択に値する未来」
     概観和訳 https://www.unic.or.jp/files/a_66_700.pdf(2021/7/9閲覧)
    我ら共有の未来: 「環境と持続性を考える -3-:国外の情勢 (2) 「2000年の地球に関する大統領への報告書」から「持続可能な開発」へ」の注7「ブルントラント委員会」を参照。
     https://fsi-mp.aori.u-tokyo.ac.jp/2021/01/--3-22000.html
  9. 国連大学包括的「富」報告書:自然資本・人工資本・人的資本の国際比較(国連大学地球環境変化の人間・社会的側面に関する国際研究計画・国連環境計画(UNEP)編,明石書店,358 pp., 2014.
     2012年版のテーマは「自然資本」。その後数年おきに課題を絞って発表されている。
     本報告書の中で,人間の福祉は将来世代の福祉が含まれなければならないが,総資産を計算してみると,ある種の自然資本を減耗した場合,ほかの自然資本や人工資本で代替することはほとんどの国で経済性が低く,完全な形での代替可能性を仮定すること自体が非現実的としている。加えて,自然が提供してくれるものの大部分が人間にとって必需品であること,それらのサービスの多くは公共性を帯び,財産権を個人に割り振ることが難しいと指摘する。
  10. ブルントラント委員会については「「環境と持続性を考える -3-:国外の情勢 (2) 「2000年の地球に関する大統領への報告書」から「持続可能な開発」」を参照。
     https://fsi-mp.aori.u-tokyo.ac.jp/2021/01/--3-22000.html
  11. 包括的富指標(IWI: Inclusive Wealth Index): この指標は従来型の富を表す国内総生産(GDP:Gross Domestic Product)を補足し,より包括的に富や豊かさを示す尺度。この指標では,世代間の福祉と関連する富の変化は資産基盤の変化から直接測られるので,持続可能でない経路を反映することができる。計算には,資本資産に加え,国の生産的基盤の大きさに影響を与える特定の要因,1)気候変化の潜在的な被害,2)石油価格の影響,3)全要素生産性の変化に反映される技術進歩の役割が加味されている。なお,続く「人的資本に関する報告書」は2014年に発表された。
  12. 「環境と持続性を考える 4:国外の情勢 (3) 「地球環境サミット」から「ミレニアム開発目標」「持続可能な開発に関するヨハネスブルグ宣言」」を参照。
     https://fsi-mp.aori.u-tokyo.ac.jp/2021/09/4-3.html
  13. 「環境と持続性を考える -2-:国外の情勢 (1) 「人間環境宣言」と「成長の限界」」を参照。
     https://fsi-mp.aori.u-tokyo.ac.jp/2020/11/--2-1.html
  14. 我々が望む未来(The future we want): データベース『世界と日本』(代表:田中明彦),日本政治・国際関係データベース,政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所
     https://worldjpn.grips.ac.jp/documents/texts/ENVI/20120622.O1J.html (2020/11/17閲覧)
  15. グリーンエコノミー(グリーン経済): 環境問題に伴うリスクと生態系の損失を軽減しながら,人間の生活の質を改善し社会の不平等を解消するための経済のあり方。
    UNEP(2011):Towards a Green Economy: Pathways to Sustainable Development and Poverty Eradication
     https://all62.jp/ecoacademy/images/15/green_economy_report.pdf (2021/11/5閲覧)