UNEPがプラスチック汚染防止に関する国際的に拘束力のある文書の改訂草案を公表
海洋環境を含むプラスチック汚染に関する国際的な法的拘束力のある文書を作成するための政府間交渉委員会第4回会合(INC4)が2024年4月23〜29日にカナダ・オタワで開催される。
国連では,国連海洋計画(UNEP)が主導して,海洋環境におけるプラスチック汚染に関する国際的な法的拘束力のある文書の作成が進行している。今回そのための政府間交渉委員会第4回が行われることに合わせ,草案(UNEP/PP/INC.4/3)を2023年12月28日に公表した。
本文は69ページで6部構成になっている。
第1部は前文,目的,定義,原則,適用範囲で,例えば,目的では以下のように選択肢が二つ示されている。
選択肢1:この文書の目的は,人間の健康と環境をその悪影響から守り,持続可能な開発を達成するために,プラスチックのライフサイクル全体に取り組む包括的なアプローチに基づきプラスチック汚染の防止,漸進的な削減,廃絶を通じて2040年までにそしてそれ以降取り組みを強化する,海洋環境およびその他の水生・陸生生態系を含むプラスチック汚染を終わらせることである。
選択肢2:この文書の目的は,プラスチックの全ライフサイクルに取り組む包括的なアプローチに基づいてプラスチック汚染を終わらせることにより海洋環境およびその他の水生生態系と陸生生態系を含むプラスチック汚染の悪影響から人の健康と環境を守ることである,2040年までに各国の優先事項に従ってプラスチックとプラスチック廃棄物の管理利用を行い,その後の取り組みを強化し持続可能な開発,貧困撲滅と公正な移行を達成するために,共通だが差異ある責任の原則とそれぞれの能力を考慮し財政的・技術的支援も行う。
第2部は,主要プラスチックポリマー,懸念のある化学物質とポリマー,短期間使用や使い捨てのプラスチック製品,意図的に添加されたマイクロプラスチックを含んでいる,問題のあるプラスチック製品・回避可能なプラスチック製品(そしてその類似品)について述べられている。
その中でマイクロプラスチックはこれまでも取り上げられていたが,それよりもさらにサイズが小さいナノプラスチックが明記されている。また廃棄物管理ではプラスチック廃棄物管理と同じ項立てで「漁具」が挙げられており,これまで対策が後追いになっていた水産国日本としては厳しい対応を迫られそうである。
第3部は,資金調達,能力構築,技術支援,技術移転。
第4部は,国ごとの行動,実施計画,実施と遵守,進捗状況の報告,実施状況の定期的な評価と監視,国際協力,情報交換,意識向上,教育,研究,関係者・利害関係者の関与,健康面についてである。
第5部は,将来の条約の管理機関,補助的な機関,事務局に関する項目。
第6部は,以下にある条約に含まれる可能性のある文書である。
付属書A. 一次プラスチックポリマー,懸念される化学物質とポリマー
付属書B. 短期使用や使い捨てのプラスチック製品,そして意図的に添加されたマイクロプラスチックを含めた,問題のあるプラスチック製品や回避可能なプラスチック製品
付属書C. 製品の設計,組成,性能
附属書D. 共通原則に基づく拡大生産者責任(EPR)システムの確立と運用のための方法
付属書E. プラスチックが生産されて廃棄されるまでの生涯(ライフサイクル)を通じたプラスチックポリマー,マイクロプラスチックを含むプラスチックそのものの排出源と放出源
付属書F. 廃棄物管理
付属書G. 国家計画のための形式
付属書[X]. プラスチックのライフサイクルにおける各段階での効果的な対策
政府間交渉委員会は第5回が本年11月に韓国・釜山で開催され,ここで大筋合意を目指している。条約の採択は2025年以後とされている。
国連環境計画が公表したINC4への草案(UNEP/PP/INC.4/3)(2024/4/11閲覧)
https://wedocs.unep.org/bitstream/handle/20.500.11822/44526/RevisedZeroDraftText.pdf
(文責:野村英明)
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