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Research研究内容
2-3.プラスチックの細胞組織への導入機構と人体影響評価
プラスチックの細胞組織への導入機構と人体影響評価
マイクロプラスチック(MP)のヒトへの主な侵入経路として経口摂取による腸管吸収が考えられ,腸管からの吸収や蓄積,さらにその先の人体影響を知る必要があります。高度なヒト小腸モデル細胞実験では,取り込み経路とメカニズムの検討のために,50, 100, 500 nmのPS粒子に暴露したところ,50, 100 nmのMPは主に血液中に,500 nmのものはバクテリアの認識機構を通じて主にリンパ管に取り込まれました。今まで動物実験における経口投与で,数~数十µmの粒子が臓器に分布蓄積することが報告されていましたがその経路は不明でした。今回の細胞実験で,大きな粒子がリンパ系に取り込まれた後に血液に流入すると推察されたことは,重要な知見です。リンパ系に取り込まれたMPは,免疫細胞を一定程度活性化させたものの,プラスチックが非分解性のため,抗原提示を通じた獲得免疫(一度体内に侵入した異物を記憶し,次に侵入した際に攻撃する)は起こらないと考えられました。しかしながら今後は,長期の継続的なMPの取り込みを想定し,持続的な免疫細胞の活性化(自然免疫)・臓器細胞障害・組織修復の結果としての組織炎症障害など,より正確な長期毒性予測を行っていきます。
さらに,MPは最終的には肝臓が重要な分布臓器になります。MPが小腸から吸収された後,直接血流を介して全身に分布することを想定して,ヒト肝臓モデルを用いたMP(50 nm, 1 µm)の肝組織への蓄積と毒性の解明を進めました。ミトコンドリア活性測定に基づく各細胞の毒性発現濃度を適用すると,肝組織内ではどの粒径でも自然免疫に主に関与する免疫細胞である肝のクッパー細胞において強い毒性が現れました。肝臓細胞実験ではMPの毒性と蓄積を測定し,数理モデルと組み合わせることによって,微細PS粒子の曝露量に対する肝組織中のMP蓄積量と毒性を推測できるようになりました。今後はさらに様々な仮説に検証を加え,慢性毒性機構を基にMP影響の理解を深めていきます。
- 1-1. 海面から海底泥まで海洋空間でのマイクロプラスチックの動きを追跡・調査する
- 1-2. マイクロプラスチックの動きを現場データと数値実験モデルによって明らかにする
- 1-3. 日本周辺海域70年間の海洋プラスチックごみ時系列変化:海洋プラスチックごみの歴史的変遷を明らかにする
- 2-1. 陸域から海域へのマイクロプラスチックの流出過程とMPに起因する化学的物理的生体影響
- 2-2. 食物連鎖の中でのプラスチック関連物質の挙動,遺伝子応答
- 2-3. プラスチックの細胞組織への導入機構と人体影響評価